九州大学医学部 小児科 [成長発達医学分野]

教授挨拶

小児科は、遺伝・感染・発達をキーワードに、未来を担うこどもたちを健やかに育む総合診療科です。小児科医は、社会を見渡す広い視野を持ち、最先端の知識と技術に基づいて診療します。家族とともにこどもたちの成長と発達を見守り、大きな喜びを感じる職業です。私たちは、新生児・循環器・血液・免疫・腫瘍・神経・アレルギー・内分泌・代謝・腎、そして遺伝病など、幅広く専門性の高い医療を実践する小児内科・新生児内科の専門医です。同時に、感染症などのcommon diseaseにプライマリ・ケアを行う総合医であり、地域の小児・学校保健の担い手として、育児相談・乳幼児健診・予防接種などを行います。病気だけではなく「不慮の事故」や「虐待」などからこどもを守ることも、私たちの大切な仕事です。小児科医は、第一線の診療から最先端医学まで、広く、深く、質の高い診療・研究・教育を実践し、世代を超えて「いのちと人生」をみつめる心優しい科学者でなくてはなりません。

“医学即臨床”の伝統を明日のこどもたちのために

九州大学医学部小児科学教室は、明治37年(1904年)6月に伊東祐彦先生が初代教授として開講しました。100年以上の歴史のなかで、1000名をこえる九大小児科同門会員が教室の伝統である“医学即臨床”を発展させ、現在に繋がっています。これまで多くの優れた研究者と臨床家を輩出し世界へ情報を発信して、わが国における小児科学の進歩と小児医療の発展に貢献してきました。教室で研鑽を積んだ若い仲間は、現在北部九州を中心に大学と連携して小児科・新生児科の診療に携わっています。教室の出身者の多くは、大学をはじめとする教育・研究機関、地域の基幹病院・療養施設、そして行政など幅広い領域にわたって、指導的立場で活躍しています。私は2016年6月1日付で第8代教授として着任しました。

九州大学病院が担う小児・新生児の診療と研究について

九州大学病院はわが国の国立大学病院の中で最も病床数が多く、小児科学教室のスタッフは、小児医療センター内科部門に58床(共通床・感染症病棟を含む)、総合周産期母子医療センター新生児内科部門に25床(NICU , GCU)、および小児救命救急センター(小児集中治療室:PICU)に6床の計89床を担当しています。総合周産期母子医療センターと小児集中治療室は福岡県の認定施設です。九州のみならず全国から患者さんをご紹介いただき、難病、希少疾患から悪性腫瘍まで、質の高い診療と先進的な基礎研究・臨床研究を行っています。

小児科医を目指す皆さんへ

医学は各専門領域に細分化され、深い知識と高度な技術が要求されます。しかし、私たちは“臓器別の疾患”ではなく、病気と闘いながら逞しく成長と発達をとげる“こどもたち”を診ています。超少子化の時代には、出生前・発症前診断、遺伝子治療、再生医療、心の問題などさまざまな場面で最新の知識と技術、そして総合力が求められます。Subspecialtyの新たな統合が必要な時代です。医師ひとりの存在は小さなものですが、チームになれば素晴らしい力を発揮することができます。個の多様性を最大限に生かすことのできる、皆の拠り所となる小児科学教室が私たちには必要です。明るく、優しく、逞しい、研究マインドあふれる小児科医が世界に羽ばたく教室づくりをめざしています。医学生の皆さん、こどもたちの未来を拓く私たちの仲間になりませんか?

九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野 教授
大賀 正一