九州大学医学部 小児科 [成長発達医学分野]

研究グループ紹介 エコチル

「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」は、環境省が主体となり実施している前向き大規模疫学調査です。2011年1月から2014年3月まで日本中でリクルートされた約10万組の子どもたちとそのご両親に参加して頂いています.この調査では、赤ちゃんがお母さんのお腹にいる時から長期間にわたり定期的に健康状態を確認させていただき、環境要因が子どもたちの成長や発達にどのような影響を与えるのかを明らかにします。九州大学小児科では、産婦人科・小児外科・小児歯科・皮膚科・心療内科など大学病院にとどまらず、農学研究院・総合理工学研究院と協力し、また福岡市立こども病院・国立病院機構福岡病院など他施設とも連携しながら研究を進めています。


2019年度から開始された「学童期検査」:九州大学で小学2年生のお子さんに検査をします。

研究成果

これまでに、妊娠から新生児期までのデータを使って以下の研究を発表しました.今後は、子どもの精神神経発達、アレルギーを含めた様々な疾患も対象に幅広く研究を進めていく予定です。

1. 母親の悪阻(母親の体重が減ってしまうほどの強いつわり)があると、SGA(small-for-gestational age: 妊娠期間の割に体格が小さい)児が生まれやすくなるという報告もあれば、そうではないという報告もあり、日本からの研究はあまりありませんでした.私たちは、悪阻があるからといってSGA児が生まれやすくなるわけではないことを明らかにしました(Morokuma et al., BMC Pregnancy and Childbirth, 2016).
※調査初期の約1万人分のデータによる結果です

2. これまでに、睡眠時間が短いとSGA児が生まれやすくなるという報告がありましたが、私たちは、睡眠を質問票で評価し、「睡眠時間が短い」または「睡眠の質が良くない」場合でもSGA児が生まれやすくなるわけではないことを明らかにしました(Morokuma et al., BMC Research Notes, 2017)。
※調査初期の約1万人分のデータによる結果です

3. 私たちは、妊娠中の食事中のタンパク質からのエネルギー(食事調査票から計算した量で、実際に食べた量とは必ずしも一致しません)が12%の時に、出生体重が最も大きいことを明らかにしました(Morisaki et al., British Journal of Nutrition, 2018)。

4. 胎児心拍モニターでチェックした胎児機能不全があると新生児のかんしゃく(temparament)が強いという報告がありましたが、その原因はわかっていませんでした.私たちは、胎児機能不全が原因でかんしゃくを起こしているのではなく、逆にかんしゃくがあると胎児機能不全と判断されやすいのではないかということを明らかにしました(Morokuma et al., Scientific Reports, 2018)。

園田有里、實藤雅文

研究グループ紹介Clinic & Research group

10の専門グループに分かれて診療・研究を行っています。全ての分野をカバーし、かつ教育にあたっています。

  • 免疫・血管
  • 腫瘍
  • 感染症
  • 循環器
  • 神経
  • 腎
  • 新生児
  • 内分泌・代謝、先天代謝、遺伝
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  • アレルギー
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